ジョン・マクティアナンは今じゃモウロク監督だが 「ダイ・ハード3」あたりまでは中々シャープだった。 特に「目にみえないもの」を演出させると右に出るものがいない。 それが「プレデター」の宇宙人であったり、 「ダイ・ハード」のテロリストであったり、 「レッド・オクトーバーを追え!」の無音航行可能な ソ連の原子力潜水艦であったりするのだが。 その彼のデビュー作「ノーマッズ」は一味変わった オカルト映画の傑作。 主演は“007“に昇格する前のブロスナン。 目に見えないはずの革ジャン幽霊が集団で追いかけてくる!怖ぇぇ! そんなひとの社会の中に人知れず存在するという”ソレ”を 居てもほとんど見ることのない”ソレ”を 見てしまったら・・・。 これは子どもの頃、夏休みに 百姓のじいさんが語ってくれた「恐ろしい話」が いまだにトラウマになっていてですな。 どんな話かは文中で、そのまま載せましたが。 何故こんな話をイタイケな少年にしたんだろう、というぐらいオゾマシイ話で。 夜、うなされたものですが。 以前、某掲示板で書き散らしていたモノを再構成してみました。 書き物としては拙作「少年時代」の裏側のような文章でして あちらが陽気な雰囲気なら、こちらはゾッとするような暗黒面です。 何処のコミュニティとも関係ないオリジナルな短編でございます。 昭和の夏の思い出。 イメージは松岡直也氏のアルバム「夏の旅」のジャケット。のような。 あぁゆう風景は・・そこいらにいっぱいあったんだけどねぇ。 今回のサウンドトラックではないのですが雰囲気は可也あります。 http://www.youtube.com/watch?v=M3MAmX0aNpA 「田園詩〜夏の旅」 最後はラブクラフトに毒された・・w シンプルなショッカーです。 |
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森の入り口にたどり着くと蝉の声がやかましいほどだった。蝉時雨。
風が木々を揺らしざわめかせていた。巨大な椎の木や楠木にカブトムシが貼り 付いていて。虫取り網で捕らえ、虫かごに入れる。
いっぱいいる!
夢中になって、森の奥に入っていくと。
木々の間から小びろい空き地があり
朽ち果てた建物が見えた。
あれが「屠殺場」の址なのか_。
と思うと、なにか暑いにもかかわらず
冷たい汗が背中を伝った。
あそこで・・牛や豚がたくさん殺された・・・。
そして、その向こうから先程の白い和服の婦人が
森の中だというのに、日傘をさして歩いていた。
やばい!
声を押し殺してしゃがみこんで、隠れる。
「見つかったら何をされるか分からんぞ。」という
おじいさんの声が頭の中で何度も響いた。
だが、それならそれで・・どんな顔しているのか見ても見たくなった。
そのうち草の陰から様子を見ていると
日傘を差しかけたまま、和服の婦人はギャーギャーと
なにか・・動物じみた声を発しているのが聞こえ
また違う低い声が、獣じみた声で答えているようだった。
ひとりじゃない。
心配は不安を高め、膀胱を直撃した。
そうっと。草の陰に隠れながら、用を足す。
ホッとした、そのとき。
ギャーギャーという声がすぐ後ろでして
振り返ると和服の婦人が立っていた。
「ごめんなさい!」と大きな声で言うと
それより大きな声で、ギャーギャーとさけび
大きな・・白目のない眼で覗き込んできたんで
猛然と森の中を走り、逃げ出した。
走れ!走れ!
ふりかえると、和服の婦人が走ってくる!
追いかけてくるよ!
走れ!走れ!走れ!
木々の間を駆け抜けて
とにかく明るいところへ!
和服の婦人が、追ってくる!四つん這いになって走ってくる!
いったい、なんなんだ!
森の入り口に飛び出すと。
さっきまでの蝉時雨はピタリとやんでいた。
上空には巨大な入道雲が沸き立ち、ゴロゴロと雷の音を鳴らしていた。
四つん這いの和服の婦人の他にも何人か。男か女か分からないが
四つんばいの大人たちがギャーギャーと叫びながら。
囲まれている・・。
「コラァーっ!ワシが相手じゃっ!」
野太い声がして、振り返ると、さっきのおじいさんが釜を持って立っていた。
なんかおじいさんに抱きつくと。
「いいから、走って帰れ!絶対に振り向くな!さっさとかえれ!」
と振りほどかれ、泣きながら走って帰った。
絶対に振り返らなかった。後ろで大きな雷が落ちたような音がしたが。
振り返らずに走って帰った。
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