1992年 ヨコハマインターコンチネンタル ホテル


John coltrane - Invitations


真新しいホテルのスイートルーム。
間接照明がムーディーな雰囲気を醸し出し、有線放送のジャズが艶めかしさを
深めている。しかしその緩やかなテンポと裏腹に男の腕は女の背後から胸元を
荒々しく揉みしだきながら耳たぶを甘く噛む。
女は甘い吐息を吐きながら、男の腕を解き放そうとする。

「もう。シャワー浴びてから・・。」
「もう待てないし。」

 男は腕を再び乳房に伸ばす。
だらしなく乱れたブラジャーから豊かな乳房がはみ出す。
やや大きめの乳輪を目にすると今度は男は一転して優しく乳房を眺め舌で愛でる。
荒々しく女の服を脱がし自らもジーパンを脱ぎ捨て、男は女をベッドに押し倒す。
互いに舌を伸ばし絡ませキスを繰り返す。

「なぁ・・口でしてくれよ_。」

男はパンツを脱ぎ勃起したペニスを女の顔の前に見せつけるように差し出す。

「おまえの口技ぁ上手だからさぁ・・なぁ・・いいだろ?」
「こんなに大きくなっちゃったの・・口に入らないよ・・。」
「ほらぁ・・頼むよ・・」

 男が腰を突き出すと、女はためらうこともなくペニスにしゃぶりつく。
男が深い吐息を漏らし身を捩る。

「やっぱりお前のフェラ最高だよ・・。」

 男は女の黒髪を優しく撫でると女は激しく音を立てて吸い出す。
男が身もだえするのを上目づかいに見ながら女は更に深く音を立てて咥えこむ。

「大きすぎるわ」

唾液を垂らしながら息を荒げて女が云うと、男は息を弾ませて
女の体に圧し掛かる。

「なぁ・・しようぜ・・。」
「あんまり焦ってすると早く終わっちゃうんじゃない?」
「え・・?大丈夫だよ。必ずイカしちゃうからさ・・。」
「本当に?でも一回きりじゃいやよ・・」
「何度でもできるぜ・・俺、変態だから・・。」

ふたりは含み笑いをしながらベッドサイドに腰掛ける。
女がテーブルの上のピルケースを手に取る。

「つかう?」
「え?あぁ。」
「いくつ?」
「そうだな・・俺ふたつ」
「じゃぁ・・わたしもふたつ・・飲んじゃお!」

青い錠剤をグラスの水で飲み込む女。
男もグラスの水で一気に飲み込む。
乱れたベッドカバーを剥ぎ全裸で女は仰向けに横たわる。
女の足を開くように腕で広げながら、女の湿った陰部に勃起したペニスを押し入れる。
声を出すまいとしたのか女は息を飲んだまま眉を歪ませる。
そのまま男は一気に深く挿入しようと上体を前にゆっくりと傾ける。
すると女は男の上体にしがみつく。
勃起したペニスが蜜壺の奥へ奥へとグイグイと入ってゆくと更に潤いを増した女は
嗚咽を上げる。

「凄いわ!子宮の奥の奥まで届くわ!」
「凄いだろ、俺ってデカいしさ、硬いしさ・・」




そう言い切る前に脱力したように男は一旦女の入り口まで一気に後退する。
すると女も下腹部にあった緊張が一気に緩み、また違った声をあげる。
其れを見て男はまた一気に女に差し入れるように腰を突き出す。
二、三度繰り返すと男は腰を緩やかに軽快に前後させる。
紅潮した女は全身から汗を噴き出し身を捩る。
「いいの・・いいわ・・・いいわ」
男は女の大きく振るえる胸を両手で揉みながら、徐々に腰の振りを大きくする。
「いいのか・・どうだ・・凄いだろ。」
女は胸をさらに震わせ、荒い息遣いとなり気をやって、男は絶頂に差し掛かろうとしたとき。

女の表情は別な苦悶のものと変わり、やがて左右にバタンバタンと大きく腕を振り
男を跳ね除けた。
両手で首を庇うように抑え、その手は顔面を覆い、自らの口を自分で開こうとしているように
見えた。

「なにふざけてんだよ、そんなの演技過剰だぜ」
跳ね除けられた全裸の男は再び挑もうと女の両足を広げようとするが、女が気が触れたように足を
ばたつかせるので怒り出して、立ち上がった。
そのとき停まっていた呼吸が一気に復活したような、音を立てて女がベッドに跳ね起き、
大量の酸素を吸い込むと再び呼吸が止まったように苦しみだした。
さすがに男は異常に気付いたが、そのまるで悪魔付きになったような女の表情と、
人間とも動物とも思えない女の異常な四肢の動き方に圧倒されてか、
床に座り込んでしまった。
女は髪を振り乱し口から泡を吹いて喉を掻き毟り、悪魔めいた大声を上げると、
ぐったりと動かなくなった。

そんな女の状況を男は目で見るのも恐ろしかったのか床に伏せたまま震えていた。



女が動かなくなって数分後、男は恐る恐る立ち上がり、女の方に歩み寄る。
が、女が微動だにしないのを見ると、ガラスのテーブルまで後退りした。
テーブルの上の移動電話のアンテナを伸ばす。

「あぁ・・おれだよ・・ちょっとさ・・やばいことになっちゃってさ。
麗華の奴・・ラリッていっちまった・・じゃなくて。
本当にラリッて・・死んじまったみたいなんだ。
いま?横浜・・
救急車?
だってさ、もう死んじゃってるみたいだしさ。
車?あぁ大丈夫だと思う。
マスコミに感ずかれるかな、やばいよなぁ。
なぁ・・おまえ・・身代わりになってくんね?
だってさ・・ほら・・俺・・芸能人だし。
ほら・・将来有望じゃん。
だろ?
だから絶対おまえのこと一生面倒見れるから。さ。
な、たのむよ。一生のお願いだからさ・・な。」


男は靴下を履く。

「事務所はさぁ・・多分同じことを言うと思うんだよ、な。
とりあえず、俺、ここにいちゃまずいからさ。
え?そうだよ、おまえここに来てくれない?
俺の代わりにさぁ。」

男はパンツを履く。

「だからそうもしてられないだろ。
とにかく俺はここを離れるから。
頼むぜ、アト。」

男はシャツを着る。

「あぁ電話切るわ、あともう一件電話するし_。」

男は電話をかけなおす。

「あ・・俺です。
実は麗華が・・死んじゃったみたいなんですよぉ・・
え?やってて突然・・ええ」

男はベルトをして電話をもったまま部屋を出ていく。

RECマークが消え、テープが終わる。





 
   




inserted by FC2 system