え?浴衣なんて・・いや想像もしていなかったからさぁ。

凄く似合っている。もうムラムラ。いやごめん。

そういやぁ、珍しいもの買ってきたんだ。

そぅそぅ昔はよくあったよなぁ〜

ブタの蚊取り線香入れ。

やっぱさ、これがないと始まらないじゃん。

竹薮が近いからさぁ、薮っ蚊がうるさいからさぁ〜。

 

これと桃缶の底に蝋燭立てて、と。

蝋燭のおしりにさ、火をかざして少し溶かすんだよ。

そうすると立ち易くなる。

ほら、立った。

 

でもさ。

キミがまさかこういうのが好きだとは思わなかったな。

え?どーんと、夜空に上がるようなヤツだと思ったからさ。

花火って云うから。

 

いや、いいんだ。

ふたりで楽しむには。あんまり派手派手しいのもね。

風流さを欠くというか_。

なに?似合わないって、ぉい笑うなよ。

線香花火に火をつけますよ!っと。

 

<牡丹>

 

いや、火をつけたのはキミの方だぜ。

そりゃぁ、偶然の出逢いだったけど。

最初は、お互いに照れていてさ。

なにも話せなかったけどさ。

 

え_?

もちろん、そりゃぁボクも健康な成人男子ですからね。

そうゆうキミだって、あるときから

凄く積極的になったよね。

 

吸って。

吸われて。

そのころには、もぅ互いのことしか見えなかった。

あぁ、そうだ、花火がよく見えるように。

蝋燭の火は消しちゃうよ

 

<松葉>

 

火花が弾ける。

_小さいが、暗い闇に最初の衝撃。

白いうなじが妖しく誘うようだ。

 

弾ける。弾ける。

_欲望を満たし、満たされ・・。

 

弾ける。弾ける。

_恋は盲目、既にキミしか見えない。

 

弾ける。弾ける。弾ける。

_痛みを超えた快楽をむさぼりながら。

 

弾ける。弾ける。弾ける。弾ける。

_もぅ自分ではこの動きは止められない。

 

弾ける。弾ける。弾ける。弾ける。弾ける。

_互いに傷つけあいながらも、いとおしく求め合いながら・・!

 

弾ける!弾ける!弾ける!弾ける!弾ける!

互いの血肉を分かち合うように。

互いの身体を絡みつかせて。

キミが望むものを全て与えよう!

 

弾ける!弾ける!弾ける!弾ける!

弾ける!弾ける!弾ける!

いまさら種族の違いなんて、なんだというんだ!

私が与えられる全てのものをキミに捧げよう!

 

弾ける!弾ける!弾ける!弾ける!弾ける!

弾ける!弾ける!弾ける!

二度と元には戻らぬとしても!

なにが問題だというのだ!

之ほどまでにキミを愛しているのだから!

この身が弾けようとも!

 

<柳>

弾ける! 弾ける! 弾ける!

いつまでも、いつまでも愛し続けたいのに。

 

弾ける! 弾ける!

ひとの力の限界なのか_体から力が抜けてゆく。

 

弾ける!  弾ける。

眠気をさそうような心地よい疲労が全身に広がってゆく。

 

弾ける。

キミの中に取り込まれていくようだ。

 

弾ける。

溶けてゆく_。

 

<散り菊>

そして線香花火はちいさな火の玉だけになって。

火の玉が落ちると、あたりは暗闇が広がった。

誰も居ない暗闇には、かすかに火薬と血の匂いだけが残っていた。

どこからともなく、ちりん、と。風鈴の音がした。

 

 

 

● 口上

20100812

Novelistさんに参加してその日のうちに書いた文章です。

当時は好きな映画のタイトルを付けていました。

 

「クロノス」改め「線香花火」

いまでこそギレルモ・デル・トロと云えば

ジャンル映画ファンの教祖的な存在であるんだが、

デビュー作のこの作品からしてやはり当時から

他の映画監督とは格段の違いを見せていた。

必要以上に「ジャンル」で、必要以上に「アート」。

しかしそのコンセプトは意外なほど「クラッシック」。

ジョン・カーペンターは「兄貴」だが、あんたを「叔父貴」と呼びたい!

そんな映画だったな。

 

で、こんなタイトル付けちゃうとネタバレになっちゃいそうだけど。

吸血昆虫も、女吸血鬼も出ません。

ん?

出てませんヨーッ!

 

ということで、今回イッキなし参戦を企てた短編家コミュで

頂戴したお題「花火」に沿って、書いてみました。

あ、怒らないで・・。

 

 

  

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