10月も後半になると、気温もグッと下がり肌寒さを感じる頃。
耐えかねて、暖房器具の心配をしだすと、
この湖畔にせり出す山々の木々の葉もいよいよ色づいてくる。
一枚一枚の葉がカラフルに色づくと、やがて山全体が色づき、
更にこの湖を抱える山々全体にひろがる。

 

 イチョウの葉は黄色く変色し落葉し、湖畔の遊歩道を温かな色に染め
もみじの葉は赤く変色し、そのセンセーショナルなまでの鮮やかさは
夏の終わりから遠ざかっていた人々の足を再びこの湖の畔に
向かわせる。

 

 秋の行楽シーズンには終着駅から川のせせらぎを聞きながら
人々は湖畔を目指して、ゆるやかな坂道を登る。
整備された歩きやすい遊歩道でもあるが、
小さな瀧の横にたどり着いて
最後の長い階段を前に大抵の人は、息をつく。

 

 それでもゆっくりと。
一段、一段、ゆっくりと歩を進めれば。
階段の最上段は小びろく開けその先の林を抜ければ
湖畔に出る。

 

 湖の半周ほど遊歩道が続き、そこには観光客が多く訪れ
ベンチと云うベンチに。傍らの広場と云う広場に
観光客が紅葉を愛でにやってくる。
そんな光景が大好きで、私もその辺りにイーゼルを立てて
スケッチをおこなう。

 

 湖畔の紅葉は、時間によって、また天候によって、
色のつき方が微妙に変化してゆく。
なかなかベストな状態にはなることが無い。

 

 早朝の冷たい空気の青い光に映える凜とした硬さ。

 

 午前中のまだ青さの抜けきらない、
新鮮さを演出する光のなかで主張する赤色。

 

 午後の暖かなオレンジ色の光に包まれ、
マゼンタに深みを増す山々の木々。

 

 そしてひとたび霜が降りれば。
この鮮やかに色づいた山々の木々、湖畔の景色は
一変してしまい・・一気に冬の景色に染まってゆく。
邂逅。
ほんのワンチャンスなのだ。

 

 だからこそ、ここの風景画・・
特にこの時期の風景を画にすることは
病み付きになってしまうのだが。

 

 いま、まさに。
この湖畔は絢爛たる色彩の洪水が
木々をそして山を覆いつくしている。



       


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