ある日、ある場所で疲れ果てて。

寝てしまったのであろう私は。

眼を覚ますと驚愕した。

薄っすらと視界が戻ったのだ。

 

夜の砂漠・・月面なのか・・そう思わせるような

私は広大な凍てつく砂漠の中にいる。

周囲には誰もいない。

なにもない凍てつく荒野が目の前に続いている。

振り返ると。

 

すでに通ってきたはずの廃墟は見えなかった。

前を向いても。後ろを振り返ってみても。

どこを見渡してみても青白い沙漠だけが見える。

 

その青白い砂は。

まるで何かの生物の骨辺が風にさらされて風化したもの。

そう思えてならなかった。

何千、何万、それ以上の生物・・いや・・人間の骸が風にさらされて。

何千、何万年、いやそれ以上の時が。

そう思うと、まるで、ここは広大な墓場に思えた。

 

砂地獄に足をとられて、命からがらに脱出できたが

それもなにも・・目が見えるからだ。

でなければ、砂地獄に向かって突き進んでしまっていたかもしれない。

 

とんでもない荒野にひとりだけ

その孤独感は、衝撃的なものだった。

その疎外感は、くるおしいまでのものだった。

だが、考えてもみれば。

いままでも・・ひとりだったじゃないか。

 

ただ再認識させられたことに

一時的に塞ぎこんでいただけだ。

だが。

 

だが、目標が出来た。

地平線の向こうに、小さく・・

砂の波が続く遥か向こうに。

沈まぬ夕日のようなオレンジ色の光が。

 

なんの光かはわからないが、

希望をもたらしてくれる。

そう思えた。

 

これまでは

眼に見えぬ脅威によって歩かされてきたが

これからは違う。

オレンジ色に暖かに輝くあそこにいくのだ。

一歩、また一歩。

目標に近づいていくのだ。






         


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