「007は殺しの番号」
暗い部屋で拷問を受け続けていたので もう昼なのか夜なのかすらわからなかった。 両手両足をロープで縛られ、猿轡、そのうえ今度は頭陀袋で目隠しだ。 何度蹴り倒されたか解らないが そのとき右手の掌に痛みを感じ、地面に割れたガラス瓶の破片があることが分かり ここ数日、気を失っているとき以外は手首を縛るロープを 切ろうとガラスの破片を握り続けている。 感覚的にだが、ガラスの破片で切りつけているうちにロープは もうすぐ切れそうだ。だが目隠しをされたため、移動だろうか。 作業を中止し、ガラスの破片を手で握った。 両手を後ろで組まされ、目隠しをされたまま歩かされる。 左右に一人づつ、腕っ節の強いやつらがいるようだ。 いったん立ち止まるように促され、再び歩かされる。 と、今度は膝の裏を蹴られ、床に膝を落とす。 頭陀袋を一気に取られると眩しさのあまり思わず目を閉じる。 慣れるに従い目を開けると、目の前に現われたのはミナだった。 そして回転椅子の背を向けているのはエルンスト。 「悪かったわね、ジム。」 ミナは嘲り笑った。 「あぁやはりキミか。どおりで我々の標準装備を知ってた訳だ。」 エルンストが笑いながら古い傷痕の残る顔を見せた。 「ジム、君も焼きが廻ったようだな。 殺しの番号が今度こそ殺される番号になるわけだ。」 力を腕に込めると手首のロープが切れたのがわかった。 「靴の踵に銃が仕込んであるわ、気をつけて」 ミナの言葉に力が抜けた。 一発逆転のチャンスをふいにされた。 横に居た男が靴の踵の仕込銃を取り上げた。 そのとき、男に拳を喰らわせ腕のロープを引きちぎり、 銃を奪い取るとエルンストに向かって一発みまった。 エルンストの愛でるペルシャ猫が床に飛び降りた。 |