「地獄のヒーロー」
内偵の隊員から「突入せよ!」との連絡が入り 強行突入班が組織のアジトに一斉に侵入した。 アジトを攻略するのに5分。 人質及び内偵の隊員の救出に3分。 アジトの破壊工作に2分。 10分後には全員がヘリで退却する算段だ。 銃弾が飛び交い、爆発物が吹き飛ぶたびに 火薬とガソリンの焼ける匂いがする。 濛々たる黒煙が辺り一面を覆った。 日頃からの訓練の成果が現われ、敵アジト攻略に成功した。 しかし、人質の救出に時間が掛かっている。 計画通りの時間内に収まらなければ 隣の基地からの敵の応援部隊と遭遇することとなる。 時間は迫っている。 最後の最後に現場を確認するのが隊長である私の役割。 燃え盛るアジトに潜入し、地下の部屋を確認する。 首尾よく人質を全員確認できた。 酷く拷問を受けたらしい内偵の隊員を労い、撤収を指示する。 強行突入班は、組織の大幹部を確保していた。 大幹部の顔は爆発の影響で半分焼け爛れていた。 時間は過ぎていた。 組織の全容解明のため、大幹部の連衡を指示するが 人質の数が予定数を超えることが伝えられ ヘリに乗れないものが二人いる。 強行突入班全員の撤収を指示した。 私はここにヤツと残る。 工作班の仕掛けた爆弾が爆発し始めた。 最後のヘリが爆音とともに飛び立つのがわかった。 嘲る大幹部は私に尋ねた。 「どうして人質のために命を投げ出すのか?」 それが作戦だからだ。 「どうして作戦に命を懸ける?あんな人質のためにか? どいつもこいつも貴様の国を売り飛ばすような 下らん政治家ばかりじゃないか!それでも国のためなのか?」 あぁ国のためだ。 点ける薬がないほど愚かしくとも、私の国だ。 貴様らの好きにはさせん。 大幹部は命乞いを続けた。 私は静かに最後のときを待った。 |