2011/06/09
「一国一城のあるじ」

 

       
 


  
投稿 2011-06-09 22:14:36

 ●「火天の城」より改題

 「火天の城」という映画は、良くも悪くも西田敏行なんである。

 そりゃぁ「西遊記」の昔から、「釣りバカ」まで芸達者で通ってきた

 役者さん
であって。彼にかかれば猪八戒もハマちゃんも「相棒」の犯人
 
 も同一人物に
見えてしまうんである。だから稀代の名工を演じてもですよ、

 売れっ子は辛いよな。


 結局、西田敏行にしか見えないんであるよ。
 
 そんな彼の最高傑作は「ゲロッパ!」のヤクザの親分なんだろか_。


 さて、かの織田信長に安土城を作ってみぃ!と云われて奮闘する棟梁の

 戦国時代版プロジェクトX!いろんなところで健闘しいろんなところで

 残念な
映画ではあったが、いやいや、男子たるもの一国一城のあるじと

 なるべく
日々精進し、闘いつづけるのだ。


 正直、擬人化というのは実は安易な方法だと思っていたんです。


 結局は作者の言わんとするが為に、人間と同じような感覚を持たされる


 非人間なものに対して、言ってみれば、大変失礼なことでありまして

 無礼の極み。とか云わないまでも発想が安易になってしまう気がする

 デスヨね。


 え、勿論今迄だってカッパとか擬人化してきましたけどw


 今回の6月の「短編家」さんのテーマが「かたつむり」ということで。

 さてローン地獄を血だらけの足で登りながらでも我が城を持つということは


 男の甲斐性?だがね、なかなか難しい御時勢ですよね。

 一昨年2010年に旅をした松江城のオリジナル画像でございます。




「一国一城のあるじ」

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 アイツは身軽に生きるのが性に合っているんだ、なんて粋がりやがって。

 だけどな、男子たるもの、一生に一度の大事業に挑まなくてどうする?

 ちいさくて、せまくても。一国一城の主にならずに、どうする?

 そのために多くの苦労が待ち受けようが。なめるなよ。

 20年間毎月毎月、ボーナス払いも欠かさず払い続けて。

 笑わば笑うがいい。

 だがな、アイツは忌み嫌われて塩をかけられて溶かされる。

 逃げ込む穴すらないだろ、一巻の終わりだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 その点ヤツはアタマがいいのかもしれない。

 間借りしながら生きてゆく。

 あぁ、自分のサイズにあった物件を探しだして。

 大きなサイズが必要になったら、借り替えるんだ。

 悪くない考えだと思うよ。ヤツらしい、頭のいい方法だ。

 だがな、言っておくぞ、俺は一国一城の主だ。

 たいそうな城を抱えてもヤツは単なる店子だ。

 追い出されりゃ、宿無しだ。

 城の主というものはそれなりに銭がかかるものだ。

 だから夜勤のシフトだって、頑張るんだ。

 笑わば笑うがいい。

 いいか、自分の城を持つということはステイタスなんだよ。

 固定資産税とは、そのステイタスを得たものだけが支払える税金なんだよ。

 この感覚、持ち家がないとわからねえだろうなぁ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 しかしあの方ぁ、たいしたもんだ。

 ビックリするほど大きな屋敷で。

 いやぁ凄く堅牢で頑丈なつくりのお屋敷でね。

 たまたまお話しする機会があってね。

 大きなお屋敷ですね・・って言ったら。

 ゆぅっくりとした口調で言ったね。

 「おかげさまでね、しっかりした屋敷ですわ。」

 まるで岩石みたいに、ちょっとやそっとじゃ壊れそうもないですものね。

 「えぇ、耐震設計でね。」

 

 随分と掛かったんでしょうねぇ、資金的に・・。

 「そりゃぁ掛かりましたよ、おかげで9000年ローンですわ。」だって。

 さすが壱萬年生きる方々は、云うことがちがうよね。

 「まぁ、一生の買い物ですからねぇ・・」

 もうね、答えようがなかったね。たいしたもんだよ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 まぁ、上を見ればキリがない。

 下を見てもキリがない。

 前だけ見てたって仕方ない。

 だから斜め上を向いて進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 急ぐんじゃない。

 慌てるんじゃない。

 じっくりと着実に。

 時間はまだある。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 角出せ!

 槍出せ!

 我が城を守るために!

 我は君主なり!

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 あぁ、今夜もよく働いた。

 明日もしっかり働くぞ。

 さぁ、狭いながらも我が城に引っ込むか。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 ゆっくり、じっくり、進むのだ。

 蝸牛角上、何事かを争う(白居易)。

 かたつむりの角の上のようなせまい世の中で何を争うのか。

 漢詩は「さあ、酒でも飲んで大口をあけて笑おう」と続く。

 さて、晩酌でも。いざ呑まん。

 しかし人の体の中ってのは温かいなぁ。

 餌にも困らないしね、いいところですわ。

 やはり住まいには環境って大事ですよね。

 その点ウチは恵まれてますわ。

 え?私が寄生していると?

 なにをおっしゃる、わたくし一国一城のあるじでございます。

 それじゃ、皆さん、おやすみ。


 了

       




感想コメント (12)

touji77さま、ありがとうございます。正直しんどいですわ_orz。コレのもとの発想というのはカタツムリの一種で人体に寄生するものがいてという辺りのこともありましてw | 平岩隆 | 2011-07-23 07:38:21

サラリーマンの悲哀をかたつむりを通して物語る…コミカルな所といい、視点がユニークで良かったです。擬人化しつつ風刺的な書き方とか相変わらず発想が面白いし、角出せ槍出せの所で吹きましたw | touji77 | 2011-07-23 02:22:09

大橋様ありがとうございます。サラリーマンの所得は20年間下がりっぱなしですからね、考え方は様々ですよね | 平岩隆 | 2011-06-20 23:08:54

人の一生は重き荷物を負うて遠き道をゆくがごとし。その重みが人生の重みなのでしょうね。でも、自分がカタツムリだったらナメクジやヤドカリの生き方もいいなあとか思うかも。ラストの展開も良かったです。 | 大橋零人 | 2011-06-20 20:46:03

泡辺様。ホントはもちっと今の世情を織り込んで親の資産に寄生せざるを得ない状況というのも盛り込みたかったんですがねw | 平岩隆 | 2011-06-15 22:12:56

へええ〜そういうことだったのですね!そこならリーマンショックも心配ない。固定資産税はステイタス、なるほどです。妙に説得力あって面白かったです! | 泡辺海太 | 2011-06-15 16:37:55

はにびー様。オレはデートは「もしドラ」映画もダメだったよ。二人して泣いたのは「はやぶさ」映画だったw | 平岩隆 | 2011-06-14 08:20:00

昔カノジョにせがまれて目黒の「寄生虫館」だったかな。に行ったがけっこう楽しめた。中でもサナダ虫の標本はムフフだった。 | hONEY♂bEE | 2011-06-14 06:57:53

庭床さま、ありがとうございます。やはり日本は住宅事情悪すぎますよね。でも男の気概だとは思うんです。そう思ってないと辛いものなぁ_orz | 平岩隆 | 2011-06-11 10:23:55

家は我が城、我は一国一城の主也。それを成せねばうだつが上がらない。――面白い作品でした。かたつむりを擬人化、一体どんな風に……? と思っていたのですが、成程、そういう観点から見れば確かに擬人化ですね。 | 庭床 | 2011-06-11 06:21:07

健忘様。ありがとうございます。朝から辛いお言葉をいただき・・orz_そうぃゃぁ、「かたつむり」って夫婦別居ですねw | 平岩隆 | 2011-06-10 06:49:17

男はただ稼ぐだけ。その範囲内でやりくりする女房、ほんとに大変なのは山の神(奥さんのこと)だ〜  え、小遣い上げろー、でっか | 健忘真実 | 2011-06-10 04:10:19

     
       
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