本文へジャンプ





暗黒掌編工場・2012年春季企画 【テーマ】耳で書いてみました。
「デリヘル嬢とホテルに入って、ん?隣からなにか聞こえるじゃない?」
というワン・アイデアだけです。
映画好きとしては一人称の長回しワン・ショットのヒッチコックとかデ・パルマ
のタッチを狙ったのですがね、なかなか難しゅうございます。
匂いづけとしては不肖・平岩の永遠の恋人シャロン・ストーンの「氷の微笑」の
冒頭の殺人シーンとか、ラブクラフト風な怪物の影とか。
あくまで匂いづけだけw

サウンドトラックは懐かしのクラウス・ノミでいきます_。

なんかダラダラ書く病いに罹ってしまったのであります。
以前よりそれは感じながら掌編から中篇への成長、と。
タカを括っていたのでありますが、どうもシャープさに欠けるものばかり。
文章の臭いや雰囲気を重視してみようというのはあるんですがね。
なんか無駄に冗長_orz
まぁ症例がハッキリしたというだけでもマシというものでありましょうか。












Klaus Nomi - The Cold Song

へぇホントはユキちゃんていうんだぁ。
いやぁキミみたいな美人と知り合えるとは思わなかったしさ。
まさかふたりでホテルに入るとは思ってなかったからさぁ。
え?いやぁ御免、それはないな。でもさっきからドキドキしていたんだ。
え?そりゃぁ顔だって緩むさぁ。
そうさ、男はだれでもスケベだからさ。
ハグしていいかい?
うわぁ、いい匂いがするじゃん。
たまらんねぇ〜。
おおっと。
随分と情熱的なキスをするんだね。
え?従順な性格の女の子と奔放な女の子どっちが好きか?
そりゃぁ・・Hな女の子がいちばん好きかな、ハハハ。
電話?
ああお店にね、どうぞ、どうぞ。

ここ?あぁ、402号室ね。

あぁハグの続きからね。
あぁキミとなら何度もキスしたい。
触っていいかい?
あぁ、ハリがあるのに柔らかいね。
いやぁ手のひらサイズがいちばん好みですよ、うん。
直に触ってもいいかい?
そうかい?上手かい?
そりゃぁ好きこそものの上手なれっていうじゃないか。
しゃぶってもいいかい?
敏感な上向きのピンク色のかわいい・・。
赤ちゃんみたい?
あぁ赤ちゃんでも構わない。
ねぇ、赤ちゃん作ろうよ。
え?やっぱダメ?
ハッハッハッハ。



え?あぁ本当だ、壁が薄いんだね。
隣の部屋の音が聞こえてくる。
え?ハハハ、凄いな、随分とお盛んだね。
そうさ、僕らも後で思い切り聞かせてやろうよ。
凄いことしてさ。
どんなって?
あんなことやこんなことや、
あんな恥ずかしい恰好とかこんなアクロバッティックな恰好とか
え?おトイレ?あぁ・行っておいで・・
ついていこうか?
ハハハ冗談、冗談だよ。

しかし、安普請だな、隣の部屋の音が・・いや・・盛りあがってるね。
コップ、コップと。
壁にコップをつけてと。
さぁ、よく聞かせてくださいな、ハハハハ。



おおぅ、いきなり、ぃゃぁん、ときましたか!
っほほぅ、おっと、シーっと。
目を閉じて、へへへ想像力を高めて・・
おおぅ激しい息遣い。へへへへ。

  (女)“いや、いやぁん、もっとやさしく、やさしくしてぇ。“
  (男)“ごめん、こうかい?”
  (女)“いいよ、とってもいいよ。とっても大きいから。奥までとどくから”
  (男)“キミがよければ・・・”
  (女)“ぃぃぃぃぃいゃゃゃぁぁぁぁ“
  (男)“ごめん、痛かった?”
  (女)“ううん、いやじゃないよ。自分を高めるためのおまじないよ。”
  (男)“おまじない?いーやーって?”
  (女)“うん、いーやぁ。ねぇ、いっしょに云ってみてぇ、ほらぁ、おねがい。“
  (女)“こんどは上になっていい?そう、横になって・・。上に手を上げて”
  (男)“ストッキングで手を縛るの?”
  (女)“ぅぅん、リラックスして・・深呼吸しながら・・ゆっくりと動くよ。“
  (男)“いーやぁー、いーやぁー、いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”
  (女)“いーやぁー、いーやぁー、いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”
  (男)“いーやぁー、いーやぁー、いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”
  (女)“いーやぁー、いーやぁー、いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”

ハハハ、段々高まってきましたかぃ?
イヤよイヤよも好きのうちって_。

  (女)“いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”
  (男)“いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”
  (女)“いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”
  (男)“いひぃーゃぁー、いひぃーゃぁー”
  (女)“いひぃーゃぁー!”
  (男)“いひぃーゃぁー!”

  (女)“いひぃぃぃぃゃぁぁぁぁああーッ!”

甲高い女の怒号にも似た声に続いて
男の三度に及ぶ絶叫を最後に・・暫く・・静まり返って・・。
え・・なにが・・おこったんだ・・?
暫くすると、女の荒い息遣いが聞こえて・・

  “血まみれのあなたもとてもセクシーよ。
  大丈夫・・怖くないわ。恐怖なんてほんの一瞬のこと。
  ほら・・だってもう痛さも感じていないでしょ?フフフ“


なんだよ・・血まみれって!
隣の部屋じゃ、とんでもないことが・・!








  “このホテルは川のすぐ横に立っているでしょ。
  曲がりくねったさきには海に流れ込む河口があるわ。  
  底はとても深くなっていてね、
  季節に関係なく常に冷たい川の水の流れが渦巻いているの。
  だからこそ、そこに留まることが出来たのかもしれない。
  この大地を追われ、川底にしか居場所を見いだせなかった。
  永遠に訪れることなどない春を夢見ながら、
  じっとほの暗い水底で冷たさを耐え忍んで
  あの愛しい方は目覚めたのよ。
  再びこの大地の上に立ち上がるために、永い眠りから覚めて、
  血となり肉となり骨となる男の體を求めているのょ・・。
  そう、あなたは生け贄_。“


・・マジかよ。
隣の部屋じゃ女が男を刺した・・。
なんだよ、生け贄ってよ。
え・・マジかよ・・。



  “うぅん・・怖がらないで・・。
  別に私はあなたを殺してしまうわけではないのよ。
  愛しいあの方にあなたの體をお供えするだけ。
  私はあなたの温かな血だけが欲しいの・・“


狂っている・・。
どうすれば・・いい?
フロントに知らせる?
そんなことしたらオレが盗み聞きしたのがばれてしまうじゃないか。
逆切れされてこちらを逆恨みされたら・・ダメだ、ダメだ。
このまま知らぬ存ぜぬで・・あぁ、それがいい、それが。
しかし・・え?

耳をコップに当てたまま、逆側の頬に冷たい痛みを感じる。
あれ・・? ユキちゃん・・ ?
アイスピックは・・氷を砕くもので・・ヒトに向けたら危ないよ。
え?
痛みも恐怖もほんの一瞬のこと・・?
え?あぁお仲間なのね・・隣のコと・・。
ユキちゃん・・あのねぇ・・。
痛みも恐怖も和らげてくれるって・・。
そういえば、痛みも恐怖も感じなくなるのかい?
わかったよ、いっしょに唱えるんだね・・。

“ぃぃぃぃぃいゃゃゃぁぁぁぁ“
“ぃぃぃぃぃいゃゃゃぁぁぁぁ“





 

inserted by FC2 system