暗黒掌編工場 工場・月例企画201205 【概要】以下の【冒頭】を作品の第一行に引用して、続きを書く。 【冒頭】死にたくなるような雨の降りしきる、それはあれからちょうど一年経った月曜日だった。 しかしなんともダウナーな冒頭文でありましょうか。 しかも暗黒掌編工場。覆してしまうわけにもいきません。 ロメロのゾンビ映画というか、ソンビ自体が苦手なもので 他人を喰ったような話を書いてばかりなのになぜか避けて書いてもこなかったのですが。 いつのまにかゾンビのルールが国際統一基準となったので(全力疾走系はまだ基準外なんだろ?) そのルールに乗っ取って、さらに反則技を狙ってみようというフラッと書いてみました。 あぁゾンビ映画どころかゲームも苦手なんで、愛着は皆無なんですw (映画のバイオハザードはミラ・ジョボビッチ観たさでコンプリートォっ!) なにか他人のふんどしで相撲を取るような、履き心地の悪さというか感じながら。 ぐちゃぐちゃな感じにならないようにあえてゴアな描写は極力避けて。 あんまり手の込んだことをせずにストレートに書いてみようということでw むしろ掌編なんで孤独感に蝕まれていく様を狙ってみまして。 ロメロ監督に敬意を表し タイトルに「〜 of the DEAD」を付けさせていただきますw てことで“Rain of the DEAD”単純だね! となれば、サウンドトラックはショパンで行きましょう! これまた単純! |
世界が崩壊した今では以前の月曜日特有の気分的な落ち込みはもうない。 降りしきる雨が臭いを消してくれるのだろうか、なぜか奴らが来ないのだから 雨にも感謝しなくてはいけないのかもしれない。 だが降りしきる雨は一層ダウナーな気分にさせた。 その日は母さんの命日だった。 そしてアイツの一歳の誕生日。 なぜだか知らないが死体が甦って人を襲ってきた。 襲われた人は死体に食われて、死体になって甦った。 あとは出来の悪い悪趣味映画と同じ、死体は増え続け僕は街まで逃げてきた。 ちょうど一年前母さんの誕生日を祝っていたところを死体に襲われた。 父も妹も皆、その場で喰われちまった。 母さんは噛み付かれたが生きていたので、一緒に車で逃げた。 ひとけのなくなった街の一番頑丈な建物・・警察署に立てこもった。 島にひとつの警察署。 備蓄も発電機も武器もある。頑丈な鋼鉄のドアで覆われた三階建ての要塞。 けど母さんの怪我は悪化し、死んでしまった。そしてアイツが生まれた。 小柄ながら凶暴なアイツを雁字搦めに縛りつけて。 アイツを地下の牢屋に閉じ込めたまま。 だが、母の顔を持つアイツを・・撃ち殺すことが出来ず。 有り余る銃弾でアイツを撃ち殺せばいい。 いつでも撃ち殺せるさ。 しかし出来ない。 やがてそのまま放っておけば餓死するだろう・・。 だが餓死することもないまま、一年が過ぎた。 備蓄がなくなれば僕も終わりだ。 だが街を覆いつくしていた死体はここのところ急速に数を減らしていった。 ここ三階から観察してわかったのは死体は共食いを始めたのだ。 死体が激減しているのであれば島から脱出するチャンスもある。 島から出れさえすれば_。 そう夢のようなことを思い描いたときだった。 署内にサイレンが鳴り響いた。 この一年間肌身離さずにいるレミントンM870に12番を装填しを構えた。 牢屋を破壊したアイツが僕にまっしぐらに襲い掛かってきた。 奇声をあげ腐乱死体と化した母の顔をしたアイツが。 躊躇することなく発砲するとアイツの頭は腐汁を撒き散らして肉片と化した。 頭を失ったアイツの体は暫くの間、不気味に動き回っていたがやがて動かなくなった。 それと同時にはじめて気がついた。 もはや僕に感情というものがなくなっていたことに。 死にたくなるような雨の降りしきる窓の外を見ていても、 乾ききった僕の感情に潤いを与えてはくれない。 雨に濡れた街角で死体が死体を食べていた。 いっそ死んでしまったほうが人間らしくいられるのではないか、と思えた。 次の月曜日まで生きていられるか、自信はない。 |