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すんません、こんな程度です・・・orz
自分で出したお題で苦しむという実に惨めな展開でありまして。
同士フレンドボーイ42が女子大生にうつつを抜かしている間に
不肖平岩が出したお題「国境」「領海」「境」なんですがね。
いやこれがまた不人気で・・orz
さてやっぱり難しいよねーなお題になんとか捻り出したのが当作。
別にどこか特定の国をモデルにした・・とかはありませんでな。
ってしっかりモデルにしてるじゃねーか!とか云わないようにしていただいて。
まぁオチまで、古臭いオチでありまして、シンプルなんでありますが
寓話的な臭いが出てればいいな、と思う次第でございます。






 

「国境の山」

わしらずっと将軍さまを信じて耐えてきたんだ。
降り続いた雨が、洪水が田畑を流してしまっても
灼熱の太陽が作物を焼いてしまっても。
将軍さまが望まれるとおり年貢をおさめてきた。
わしらずっと将軍さまを信じて耐えてきたんだ。
わしら喰うもんが減ってもさ。
かかぁの乳が出なくなってもさ。
ひもじいの我慢してさ。
将軍さまが望まれるとおり年貢をおさめてきた。
何日も喰わずにいたから、水さえも枯れてしまったから
身体が弱っちまってさ、婆がひきつけ起こしてさ。
咳をしただけで骨が折れて、其れが元で死んじまった。
かかぁの乳が出なくなっちまって、ややも死んじまった。
余りに悲しんでさ、でも涙も出ないほど欠乏していたんだよ。
なのに、かかぁは来る日も来る日も涙に暮れてよ。
悲しみのあまりバカになっちまって、鎌で首を斬って死んじまった。
もうさ、そうなると。
哀しすぎて、惨め過ぎて。
心の中にポッカリと大きな穴が開いちまってさ。
弔いも出来ないよ。
けどさ。弔いもしなけりゃ家族も浮かばれない。
そう思って畑の隅に粗末な墓を作ってさ。
小僧といっしょに弔ったのさ。
次の朝、墓参りに行ったら墓が暴かれていた。
かかぁの骸が近所のやつらに喰い散らかされていた。
こりゃぁ地獄だよ。
もう勘弁してくれぇ。
飢えた小僧までかかぁの骸に喰らいつきやがって。
もう涙も出ないが、泣いたさ。
そしたら兵隊たちが。血色のいい兵隊たちがさ。
わしらを見ながら、笑って横を通り過ぎやがった。
将軍さまの兵隊たちがさ。
わしらが精魂こめて作った作物をたらふく食った兵隊たちがさ。
喰うに困ったわしらを見て。
家族の骸まで喰らいつくわしらを見下しやがって。
ここは地獄だ。
いやここは、地獄以下だ。

そのとき決めたんだ。
あの山を越えるって。
将軍さまを裏切って山越えを目指したものがどうなるか_。
兵隊に見つかればその場で銃殺。
よくて兵隊に追われて、深い森を彷徨い
腹をすかせた凶暴な野犬共の餌食になるが関の山。
だが、もう此処にはいられない。
あの山を越えて、国境を越えて、逃げ出すしかない。
小僧を連れて、逃げ出すよりない。

兵隊たちに気付かれずに森に入った。
深い谷をわたり、凍てつくような川を渡った。
あの山を越えれば、地獄から抜け出せる。
小僧を連れて、あの山を越えれば、たらふくお飯が喰える。
あの山さえ越えれば。

あの国境の山は上に向かうに連れて岩肌が露出して険しくなる。
雪が積もって凍って、滑りやすくもなっているのだろう。
だがしかしあの山を越えねばならん。
あの山を越えれば、越えさえすれば小僧を学校に通わせてもやれる。
切り立ったまるで壁のような崖にとりつき、一歩一歩足場を確かめながら登る。
この壁を登りきれば、国境だ。
国境を越えれば。越えさえすれば。
険しい尖った山の稜線の上に広がる青い空をみろ。
そこになにがあるの?小僧が尋ねるので答えた。
そこには明日がある。
さらに小僧が尋ねる。
どんな明日があるの?
あの青い空のように澄み切った、おまえの明るい未来がある。
小僧はわしがそう答えると、腹いっぱい喰えるかな。
と久しぶりに笑顔を見せた。
最後の崖にとりかかる。
一歩一歩を踏みしめ、足場を探りながら。
いよいよ頂上に辿りついた。
わしらはその達成感と満足感で胸がいっぱいになった。

だがそこにあったのは、青く塗られたベニヤ板だった。
空なんかなかった。青く塗られたベニヤの板が立てられていただけだった。
国境の向こうはなにもなかったのだ。
夢も希望もなにもなかった。
わしらは酷く落ち込んだ。
小僧はわしを、嘘つきめ!と罵り殴りつけてきた。
腹いっぱい喰えると思うから着いて来たんだぞ、と。
そして小僧はわしん體に喰らいついてきた。
仕方ないじゃないか。
喰らうがいい。
わしん體を喰らい尽くすがいい。



 




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