アマゾン


Prism - Suspencible The Fourth (1987)


 南アメリカを流れるアマゾン河の中流マナウスより更に船で二日ほど入ったソリモエンス川沿いのある集落では
麻薬生産密売で得た巨額の富を背景に、世界各地から集めた傭兵たちによって組織された私設軍隊を従え、自らを
「国家元首」と呼ぶホルヘ・エスコヴェード一家が支配する地域がある。そこでは原住民や捕らえられた商敵に対する暴行が
日常的に行われていた。ブラジル政府もオリンピックを控え治安改善に本腰を入れて取り組む姿勢を見せたが、犯罪組織と
の癒着の多い公務員の体質もあり状況は膠着したままである。
 エスコヴェードたちの麻薬の最大の販売先であるアメリカ合衆国はその状況を訝り調査を開始した。
だが潜入したアメリカのDEAのエージェント数名が拉致され、彼らの築いた「要塞」と呼ばれる収容所に監禁されてしまった。
更にそのうちの一名の殺害され斬首される一部始終をインターネット上で配信された。DEAと米軍特殊部隊による人質奪還
作戦が検討されたが、最大の問題はその地域への足を阻む広大なる熱帯ジャングルと金にものを言わせて集められた世界
最強の傭兵部隊であった。
 そのジャングルの中に作られた「要塞」では捕らえられた囚人はコカの栽培や精製作業等の他、この辺りで見つかったリン鉱石
の採掘などの強制労働に従事させられていた。逃亡を図り命からがらテフェの街に辿りついたものの、その場で亡くなった男の話
によれば。日夜凄惨な暴力により虐待され続け偉大なるインデイオの戦士ですら自殺を図ったほどの行為が行なわれ、女に至って
は性的な拷問や生体実験まで行われているという。

 そして男の云い残したその「要塞」を取り仕切る女こそが”イリーア”。

 エスコヴェードが何処からか連れてきたヨーロッパ系のブロンド女で、身長も高く豊満な胸部と張り出した臀部をつなぐウェストは
しなやかで細い。その一見魅惑的な肉体を軍服に包み、右手には常に鞭を持って周囲を威圧しながら「要塞」内を闊歩する。
廊下の掃除が行き届いていなければその場で男だろうと女だろうと子供だろうと老人だろうと気を失うまで鞭をふるう。
料理がまずければ耳を削がれる。病人は「感染症予防の見地から」火炎放射器で焼き払われる。怪我をすれば”怪我人は無駄”と
ばかりに広場の真ん中に設けられたワニの池に放り込まれる。
 その一方で「国家元首」ホルヘ・エスコヴェード等とはその女の武器を活かして取り入りこの地域での政治的な立場も手に入れている。夜な夜な捕らえた若い男の囚人や自ら集めた傭兵たちに性行為を強いるなどの変態行為をも行なっていた。イリーア自体は性行為で達する女ではなかったが満足感を得られなかった場合はその場で「強姦容疑」で射殺した。ここでは彼女の命令は絶対であり不服従は認められない。「SS(Special Soldier)」と名付けられた屈強な傭兵たちに守られたジャングルの女帝の高らかな笑い声が木魂する。
 その日、ホルヘ・エスコヴェードの訪問を告げられたイリーアはリン鉱石の生産が落ち込んでいることを詰られるのではないか、と危惧した。イリーアはいつものようにホルヘに対する肉体的なサービスで切り抜けることもできるが、それでは面白くない・・と思い一計を案じた。それでなくとも今日のイリーアはなにとは知れずに落ち着きがなかった。そのメールのメッセージを思い出すたびに唾液が口から洩れるほど分泌されているのを感じた。乳首が硬くなるのを感じ、ヴァギナが湿ってゆくのを感じた。
ふたりの息子たちと共にジャングルの専用道路をロールスロイスで「要塞」に乗りつけた「国家元首」ホルヘはイリーアにリン鉱石の採掘現場を案内させた。ふたりの息子たちとも肉体関係を持っていたイリーアにとって彼らは事あれば自分が最高位に着くための大事な道具でもあった。だからつまらないセックスでも派手な演技でもてなした。だが今日はそうはしない。
「要塞」から川沿いの道を車でコカ畑の間を進むと採掘場に到着する。
ここでは捕らえられた男たちが強制労働させられているが手錠も足枷もない。
見張り台には黒人の傭兵が銃を携えているがipadで日本のエロサイトを観るのに夢中だ。
誰もここからは逃げ出せはしない・・奥深いジャングル、危険な生物、半日と持たないほどの感染症。
お前の人生試してみるか?そんなふてぶてしい態度を醸し出していた。リン鉱石の採掘現場はジャングルの一部を切り崩した谷に坑道を掘りすすめてゆくもので、その深さは既に百メートルを超えていた。川までトロッコで鉱石を運び出すための線路が敷かれており、川縁にはリンや肥料などを精製する小屋が設けられていた。
 そこで働く男たちの多くは地元の原住民たちであったが商敵コロンビアカルテルの幹部だった男もいた。DEAのエージェントというブラジル系の顔の男もここで働いていた。ホルヘはイリーアの考えた通りリン鉱石の生産量が細っていることを尋ねてきた。
「リン自体はどうでもいいのだがね。我が国の主要生産品の移送のための偽装にはもってこいだからな。生産量は落とさないようにしっかり監督してくれたまえ。」
ホルヘが云い終わるまえに、発破に伴う振動と騒音が体を揺らした。
その瞬間驚いたふたりの息子たちは地面に伏せてしまった。
イリーアはホルヘをその胸に抱き爆風から庇った。
すると図ったように傭兵の男がイリーアに伝えた。
「坑内で反乱分子が爆発させたようです・・坑内に怪我人多数!」
するとホルヘは恐る恐るイリーアの豊満な胸の谷間から顔を離した。
「反乱分子だと!」
途端にガタガタと震えだしたホルヘを再び豊満な胸に抱き戻してイリーアは優しく囁く。
「国家元首のあなたは私が守って差し上げますわ、ご安心ください。」
ホルヘは徐々に震えを落ち着かせながらイリーアの顔を見上げる。
「国家元首」一家は反乱とか蜂起とか・・そんな言葉に怯えきっている・・。
手懐けるのは簡単だ。
イリーアはホルヘを車に案内して、乗り込む前に傭兵に伝える。
「怪我人は集めて池に放り込んで、代わりの囚人を呼んで作業再開して!」
黒人の傭兵は親指を立てて頷いた。
「了解しました。」



 
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