o20140526 |
MIGU-28さんの「海老老人」を拝読しまして、なにか感じてしまったのです。
これまでも独自MIGUワールドの中で独特な世界観を示し、
中でも存在感を醸し出してきたさまざまな生物の存在が堪らない魅力ですが。
いやほんと、なかなか真似のできない世界であります。
しかし今回此処に至ってはなんとしても少しは近づきたいと思いつつ、
いや無断ながら客演していただこうか、と思い立ちまして。
Pamela Driggs - Itacuruçáを聴きながらサラッと書いてみたら
なんかいつもと違う平岩隆。
いままで変に「伝えること」に過剰に重心があったのではないか・・
とか反省しつつ、肩の力を抜いてボサノヴァに身を任せて書いてみまして♪
こんな感じになりました。
Pamela Driggs - Itacuruçá 海辺の国道を西に向かい半島の中程を右に降りて行った辺りにある こじんまりとしたシーフードレストラン。 普段は余り人通りもなさそうな漁村の一画だが、夕闇迫るころからは この店の最大の売り物である”サンセット&ディナー” が人気を呼び狭い駐車場はいっぱいになる。 恋人たち。高齢者夫婦。まぁこんなところにひとりで来るやつはいない。 いまどきの隠れ家風ってやつか。女子が好きな感じってこういうものかね。 だが普段からファストフードとか外食チェーンみたいなところでばかりで デートばかりしていると、どうも勝手が違うのが気になる。 いつもの紋切型の案内が無いのが、不自然に思えて据わりが悪い。 「いらっしゃませ」 「ようこそ当店へ」 「ご注文は?」 いや同じことは言われるのだ。 だがどうも趣が違う。ウェイトレスさんが若くないからか。 あぁ確かに若くはない。40も上の方だろうなと思える女性が愛想よく笑っている。 彼女が電話予約した旨を伝えるとウェイトレスさんは 「あぁ、伺っております。最高の御席をご用意していますよ。」 僕等が通されたのは海に張り出したテラスで1メートル先は海だった。 白いテーブルに座るとウェイトレスさんは早速ウェルカムドリンクを運んで来てくれた。 徐々に日が暮れて来て、なんてことだこの入り江は西に向いているのか_。 太陽が黄金に輝く西の海に沈んでゆく_。 そのころには満席・・いや、たいして大きな店ではないのだが・・。 それまでの喧騒は一瞬静まり、神秘的な光景に魅了される。 照り返しの中で見るパートナーの表情というのは倦怠感を感じるカップルには新鮮に見えるもので。 そんな売り出し文句が彼女が気に入ったのだろうか。 ここで出される料理と云うのはシーフード・・たしかにシーフード。 他のものはほぼ無い。 あさりのワイン蒸し、ムール貝のガーリックソテー、魚介のフリッター・・ いやいやそんなものだけではない勿論刺し盛もあるし寿司も握ってくれる。 だがこの店のメニューの最大の売り物は”エビフライ盛合わせ”だった。 予約したメニューの他に寿司も頼んだため、腹具合も良くなったあたりで ”エビフライ盛合わせ”が運ばれてきた。 ウェイトレスさんがしたり顔で笑うので・・。 いやそれだけの迫力が感じるほど大小の海老のフライが山と盛られていた・・。 彼女は皿が置かれるや否やすぐに大きな・・。 まるで伊勢海老のような大きなフライに手を伸ばした。 タルタルソースを付けて頬張ると・・プリップリぃーっ!と歓喜の言葉をあげた。 そんな表情を見ながら、バナメイエビぐらいのものに塩を付けて食す。 いやぁ・・海老の旨味が一気に口に広がる。 少量の塩により引き出された芳醇な甘味に満たされ、思わず笑顔がこぼれる。 |
引き潮なのだろうか、潮騒が遠のいた気がした。 「あなたっていつもおもうんだけどさ・・変よね・・好きなモノを最後まで残すでしょ。」 「え?そうかなぁ・・でも好きなものは最後に味わって食べたいじゃない。」 「私は最初に食べるわ、だって一番おいしく食べられるじゃない。 最後に食べるんならそれまでにお腹がいっぱいになってない?それじゃおいしくは食べられないわ」 なるほど道理で最初にでかいエビフライに手を出したのか_。 「ほら一番おいしそうな大きなエビフライをまだ残しているじゃない。」 あぁ、そうさ、最後にこの大物をたっぷり味わいたいと思って残しておいたのさ。 「早く食べないと冷めちゃうわよ、私が食べてあげようか・・」 「いや・・いただきますよ。ジックリと味わってね。」 「それって絶対おかしいよ。出来たてのホヤホヤを食べるのが一番おいしいにきまってるじゃない。」 「・・いいじゃないか、食べ方にまで説教するなよ。」 「説教なんてしてないわ、私はただ・・すぐに食べたいものを食べた方がおいしいって云ってるだけよ。」 あぁ・・わかったよ。 僕はまだ残っている大きなエビフライを差し出した。 すると満面の笑顔を湛えた彼女は何の遠慮もなく手を伸ばしてきた。 そしてペロッと平らげてしまった。 なにか釈然としない悔しさを感じて右手をあげた_。 ウェイトレスさんがやってきた・・「ご注文でしょうか?」 「あぁ・・海老チャーハンください。」 すると彼女は云った。 「・・ふたつ。」 ウェイトレスさんは微笑んで戻って行った。 彼女は暗い波間に目を移した。すると突然素っ頓狂な声をあげて海を指さした・・。 「あ・・・ほら・・あれ・・・」 僕は彼女の指さす方を眺めたが凪の暗い海が見えるだけだった。 「今見えたでしょ・・海老老人」 「え?」 僕は彼女の方を見た。 「なにそれ?」 「海老老人よ、えびろうじん! あそこからツツツツゥーと・・・」 それから暫くして感情が戻ったかのように喜び始めた。 「やったー、見ちゃったよー!超ラッキー!」 なんでそんなに喜んでいるのかわからなかったが、まぁそれほどレアなものなんだろうね。 今度は水平線の・・手前の海が白く光り出した。 すると今度は其処にいた客が皆、声をあげた。 イカ漁の船がライトを灯したのだ。 ウェイトレスさんが海老チャーハンを持って来てくれた。 すると彼女は「すいません、イカ刺し、おねがいします。」 |
いただいたご感想等 |
2014-05-26 23:48: MIGU-28 わああああああ びっくりしてしまいました~!! まさかの「海老老人」。 どうも光栄です♪ 本当にありがとうございます。 ワタクシ、平岩隆さんのような素敵な文章が書ける人間になりたかったです! (まず無理ですが!) しかし本当にお洒落な文章ですね~♪ こういう調理の仕方ができるのが羨ましいです~ 勉強させて頂きました~♪ (^^) 2014-05-27 00:33:33 平岩隆 MIGUさま ありがとうございます。 ここのところなにか書くことが難しいことに思えて、いろいろと悩んでいましたが 「海老老人」に出会うことによってなにか吹っ切れました。 私こそMIGUさんのような豊かな想像力に満ちた世界観を表現するようになりたい! 今後ともよろしくお願いいたします。 |