Takashi Hiraiwa Short Story 01

     


   


 2010年12月29日


「ssコミュ、お題<後悔>で書きました」、っと。


かの角川春樹を映画の世界に引き寄せたのは

1964年に小松左京の発表した「復活の日」であったらしい。

その後映画化という話が何度と無く持ち上がり消えたらしいのだが

1969年にマイケル・クライトンが「アンドロメダ病原体」を発表。

1971年にこの「アンドロメダ…」が公開される。

小松の壮大な世界崩壊の物語と比べれば地下に設けられた極秘研究所

で奮闘する5人の科学者なんて地味な・・いや本当に地味なんだが

名匠ロバート・ワイズが演出するとなんとも面白くなっちゃうんだな。


クライマックスのタイムレースがその後の「エイリアン」の元ネタのひとつ

として使われたり、化け学にトンチンカンな不肖・平岩のような馬鹿ものでも

わかる微に細に行き届いた台本、当時の最先端だったのであろう医療技術やら

特撮技術(CGとか3Dホログラムみたいなヤツもある)など地味な上にも

華が無いながらも惹きつける緊張感がたまらないわけだよ。


で、ロバート・ワイズは

「スター・トレック・ザ・モーション・ピクチャー」を監督。

公開当時技術的に追いつけなかった部分をCGで繋いだ

「ディレクターズ・カット」を21世紀に入り製作しなおして亡くなった。

考えてみりゃ、おんなじネタなんだけどな。

さてかく云いながらも。恐らくは不肖・平岩がはじめて見た洋画で。

正月の映画館で二本立てでもう一本は動物のドキュメンタリーものでそっちは

日本語吹き替え版だったんだがよ。こっちは字幕版でさ、ガキには到底読めないわけで。

しかも冒頭の血液凝固死体のシーンで気持ち悪くなって途中退出という

思い出の残る映画でw


ビデオバブルのときに見直して、またクライトンの実はよく解らん小説も読んで。

いまじゃ年に一度は見返してみたい映画の一本なんだよな。


さて大掃除の合間にちょこちょこと書き上げた今作。

子どもの夢を。日本国民の夢を。

ぶち壊していますので・・怒らないでね。な、JUST700字。



   


「アンドロメダ...」



思わず膝が崩れて、掌を床に叩きつけた。

腰砕けとはこういうことなのか。

額を床に落として。

神に祈る。

神など今迄、否定していたのに。


何を祈る?

情け無いほどに、保身。

贖罪?

なにをいまさら。


閉じた瞼には涙が溢れた。

眼を開けたくないのに。

このまま暗黒のまま、暗闇が続いてくれれば。

とすら思えたが、次に湧きあがった感情は。


笑いだった。


責任が私にあるわけではない。

起こってしまったことが

あまりに大きすぎて。


私のせいではない。

無責任な、責任逃れの照れ笑いが

事の大きさを想像するにつけ、

顔面の筋肉が引き攣るほど笑った。

最終的には半狂乱になるほど笑った。

こうなれば笑うしかないじゃないか。


このまま狂い死にしてしまいたい。

これほどの猛威のある微生物は・・初めてだ。

まるで意思を持ったような・・


意思?


「彼ら」は意思を持っていたのか!

「彼ら」は意思を持って、カプセルに入り込み

地球にやってきたというのか。

だが、いったいなんのために?


そんなことは、ともかく・・目の前で

防護服を着た私以外の人間が倒れ始め

ものの数秒で、もがき苦しみながら死んでゆく。

既に建物の外部にも広がってしまったようだ。

事故が発生し、火災が起こり、人々は尚、次々に死んでゆく。


微生物フィルターを通り越すほど微細な「彼ら」の

猛威はおさまることをしないだろう。

広がるだけ広がり、人の死骸でこの地球を覆いつくすのだろう。

この恐ろしいまでの殺傷能力を秘めた

眼にすら見えない「彼ら」によって。


防護服の接合部が腐食して溶け始めた。

もうすぐ私も、もがき苦しみながら。


私が、カプセルを開けてしまったばかりに。

小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰ったあのカプセルを。






     




inserted by FC2 system