新地2014年6月の御題が”バラ”ということでして。
 バラといえばビオランテよりは地底怪獣バラゴンを思い出す永遠の厨房魂を持つ不肖平岩。
バラといえば白菜と豚バラ肉の鍋もいいよね(冬だったらね)。バラバラ死体ものでも書きますか。
 さて、そんな戯言すら裏切り今回新地復帰作として取り組んだのは、東映やくざ映画の傑作「夜桜銀二」と
大好きだった漫画「実験人形ダミー・オスカー」(をひをひ)の世界を混ぜこぜにして
デマの大風呂敷だけを広げたような掌編でございます。

なものでイメージとしては

    成田 三樹夫 対 梶 芽衣子!

そう、「女囚さそり けもの部屋」ですなw

 いままでにない不肖・平岩w
さてそんなこんなで誕生した国際的凄腕女性暗殺者 LADY ROSE !
不肖・平岩はシリーズ化は絶対しないので、誰か代わりに書いてくださいw


ナニワエキスプレスの名曲 Oriental Makin' Love
力哉さん、熱いよね! 




  フリーの警備主任として雇われた小松原は焦りを感じていた。
あらゆる進入路をも想定した徹底した監視カメラシステム。
ネズミ一匹迷い込んでも、高感度動態感知システムによりマンション全館に警報が鳴る。
そして屈強な黒づくめの男たちを要所要所に配した鉄壁の警護体制。
なにも起こるはずはない。
だが脅迫状が送りつけられて以来この半月間というもの。
張りつめた緊張の糸も限界に達しつつあるのが肌で感じていた。
立ったまま居眠りをする警備スタッフに檄を飛ばしながら。
そういう小松原もここ数日はほとんど寝ていないこともあって柱の陰で欠伸をする。

 ”いかん。気の緩みを敵は狙ってくる。”

 小松原はポケットの中に忍ばせていたミントを口に放り込んだ。
気の緩みを生じさせるのは。彼の雇主でターゲットとされた周家宝という男の行動によっても生じた。
中国とフィリピンの間で起こったわずか三日間の”戦争”を引き起こした張本人。
彼のことをフィリピン政府は戦争犯罪人と呼び、結果的に敵に回したC.IA.はA級犯罪者と呼ぶ。
ドバイの友人たちからは借金の催促が止まらないが、一方タリバンやクメールの友人たちからは
まるで神のように恐れられている男。
 強欲なまでの商魂と欲しいものは金でも軍でも使って手に入れようとする独占欲と云うものは、
横に広がり前後に突き出した腹のように限りの無いものだ。脂ぎったこの”大人”の扱う商材は
石油・天然ガスからミサイルに無人偵察機果ては麻薬や性奴隷まで・・云ってみれば悪の権化だ。
 対して小松原は日本の警視庁警備部警護課・・いわゆるSPに籍を置いたこともあるその道のエリートだった。
いまでは金で雇われて警護するのを生業としているが、その雇い主との対比に、思わず苦笑してしまう。
これもカネの為だ。そう割り切ることで今のこの仕事にやりがいを感じることにした。
口の中に広がるミントの香りが一瞬で眠気を吹き飛ばしてくれた。
右耳に仕込んだイヤホンから通信が入る。
「”大人”の車が地下駐車場に到着する。」
監視カメラ・・地下駐車場のいちばん奥の隅のエレベーターに近いスペース・・に
黒塗りのリムジンが停まるのが見える。
小松原は目を疑った。

なんてこった!

 彼はスタッフに連絡をとりリムジンの周りに集合させた。
エレベーターを待ってはいられない。
地下への階段を駆け下りると、リムジンを取り囲む警護スタッフの中に割って入った。
「どうした警備主任、殺気立って!」
ほろ酔い加減の太鼓腹の”大人”が開いてゆく自動ドアから顔を覗かせた。
世界中がこの男を追っているというのに。ここ香港ではやりたい放題だ。
「”大人”、あなたのお客様はここからは入れません・・」
リムジンの中から現れた黒いドレスの女・・どうせそこらで拾った高級娼婦ってところか。
歳は20代後半から30代前半・・いや肌年齢は・・異常に若い。
透き通った白い肌に長い漆黒の黒髪・・挑発するような眼差し。
胸元の大きく開いた黒いドレスは豊満な胸の谷間が強調されている。
ひとことで言えば・・やりたくなる女。
「私の客だ、文句はあるまい!」
”大人”は面倒くさそうに小松原に言い放つが、警備主任は冷静に答えた。
「いいえ・・私はあなたの命を守るのが仕事です。この女性を取り調べます。」
「いいか、ここ香港じゃ、C.I.A.の犬どももムスリムのタコ共もオレ様の命を狙う事
なんかできやしねぇんだ。おまえさんを雇ってんのも念の為・・だ。わかってんのか?」
紹興酒に酔った”大人”の機嫌は悪い。
酒臭い息を吐きながら、女の胸の間に顔を埋めながらドレスのスカートを捲し上げて
パンツの中に手を押し入れた。
女は一瞬驚いたような様子をだったが、”大人”の頭を抱いた。
「ほら見ろ、このオンナぁ丸腰だぞ。凶器と云えば・・へへっとろけそうな泉だけだ・・」
”大人”は下品なジョークを飛ばしたが、小松原はニコリともしなかった。
「女は取り調べ後、お部屋に向かわせます。」
”大人”は小松原のその態度に腹を立てたが、面倒くさくなったのか
ペントハウス専用エレベーターに向かった。




  小松原は残された女を見回した。
ほっそりとした整った顔だ。
大陸的というよりは日本的な。
スレンダーなように見えて豊満な胸部。
引き締まったウェスト。
臀部の張り方も男に性的な欲望を想起させるに十分だ。
いやなんといってもその透き通ったような白い肌。
化粧ではない雪のような、それでいて熱の篭もったような。
アルコールが体内に回っているのか紅潮しているように見える。
「あなたが警備主任さんなの?」
小松原は軽くうなずいた。
「”大人”が堅物の警備のプロだって云ってたわ。」
小松原は一般用のエレベーターに女を乗せると15階のボタンを押した。
「警備のプロさんがどんな取り調べをするの?」
たいしたビッチだ。全然動揺していない。
小松原は15階の自室の部屋のドアを開けて女を強引に引きずり込む。

「あぁ警備のプロには違いない・・だが。私は女をいたぶるプロでもある。」

 謎の脅迫状が”大人”の元に届いて半月。
 脂デブの極悪人に雇われて半月。
 細心の注意を払ってきた。

 小松原は暗い部屋で女の黒いドレスを強引に引きちぎるように脱がして
半裸の女をベッドに放り出した。
自らのシャツを無造作に脱ぎ、膨張した己を露わにして女に挑みかかった。
張りの良い白い乳房が窓の外の夜景に照らされ揺れた。
程よい大きさと硬さを持った乳首に強く吸い付き唾液で汚した。
そして女に下半身を突き立て一目散に腰を振った。
女はと云えば、小松原の強引な行為をまるで無表情に受け入れていた。
小松原は女の身体に圧し掛かり、力いっぱいに抱いた。
そのとき小松原は不思議な感覚を覚えた。
暗くて確かではないが欲情し紅潮しているはずの女の肌が・・冷めきっているのだ。
確かに揉みしだいている胸乳は温かい・・いや熱い。
だが腕を回した背中にはなにか涼しげな感覚を覚えたのだ。
不思議に思った小松原は女の身体をうつ伏せにしてみた。
女の白い背中が見えるはずだった。
だが背中一面に薄いしかし艶やかに白く光る薔薇の入れ墨が現れたのだ。
暗い部屋にもかかわらず、ボンヤリと妖しく艶やかに輝いて見える白い薔薇。

入れ墨女を抱いたことは今迄だってあるさ。
入れ墨をした女は汗腺が塞がれているからな、抱いていてひんやりするもんだ。
しかしなんと見事なまでに妖艶な白い薔薇なのだろう。
小松原は暫しの間その白い薔薇の入れ墨に見惚れていた。

すると女は小笑いをした。

「どう私の入れ墨・・きれいでしょ。味わっていいのよ。」

あぁ・・と頷くと小松原は女の背中の薔薇の入れ墨に舌を這わせなめまわした。
女はくすぐったいのか、小笑いをした。
女の悦楽の笑いと思いますます舌を伸ばす小松原だったが
徐々に女の笑いが嘲笑であることに気がついた。

「どうして暗闇で薔薇が光るか_わかる?」

小松原は舌先のざらつきに違和感を覚えていた。

「そうよ、水銀を塗りこんだのよ。」

 小松原はそれを聴くと吐き出そうともがいた。
その様子を見て女はケラケラと笑った。
「ターゲットはデブの”大人”じゃなくてアンタなんだよ。アレは単なるオマケさ。」
小松原は全身から大滝のような汗を噴出し、小刻みに震え始めていた。
口が思うように開かない。
「だれだ・・おまえは・・」
女の声が冷たく響いた。
「知らないのかい?あんたプロなんだろ?」
身体が思うように動かない。床に崩れるように倒れこんだ小松原は呻き声をあげた。
「赤い薔薇の入れ墨の女_。思い出したかい?」
女は裂けたドレスを脱いで全裸になるとシャワーを浴びた。

タオルで体を拭きながら、足で小松原の顔を踏みにじる。
「アレはね、私の姉なんだよ。腹違いでも私の大切な姉なんだよ。
よくも殺してくれたね。
こんどは私がいたぶる番だ。小松原慎二。」

 小松原は頭の中を巡らせた。
白い薔薇のタトゥーの女。
殺し屋の世界じゃ知らないものはいない。まさか_。


LADY ROSE_。


 翌朝、小松原のスーツを着た女が監視カメラの横を通り過ぎた。
そしてペントハウス専用エレベーター内に仕掛けられたC-4が屋上で爆発しペントハウスは木端微塵に破壊された周家宝と家族の死体が確認された。
15階の部屋では性器を切り取られたうえ肛門に押し込まれ出血多量で死んだ小松原慎二の死体が発見された。
額にはLRとナイフで切り付けてあった。
香港警察は女を追ったがついに捕らえることは出来なかった。




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