♯シーン40 田舎の駅

首に巻かれたの爆弾を外されたスネイクは、機密を知った亜美を助けて
   
   逃走。

それから数日後。

満身創痍のスネイクと亜美は片田舎の駅に逃れた。

 

スネイク「亜美、キミとはここでお別れだ。
        港に出れば、外国への船を手配した。」

亜美「スネイク!」

亜美はスネイクに抱き着こうとするがスネイクは手を伸ばし亜美をさける。

亜美はスネイクに抱きつき、キスをする。

スネイク、亜美に無言の別れを告げ、バイクに乗って走り去る。

 

- END -



  陸上部の大会が終わった翌日、ヒロイン役のイクエが
 ヒロインらしくない真っ黒な日焼けして集合場所である田舎の国鉄の無人駅に
 やってきた。昨日の大会でメダルを逃したものの入賞を果たしたとかで鼻高々だった。
 
 「ねぇ、それでさぁ、タカシはぁ、キスってしたことあるわけ?」

  イクエはいつものようにはしゃぎながら聞いてくるので。

 「ねぇよ、おんなとは・・。」

 言葉のアヤなのだ。イクエは、しっかりとそれを捕まえた。

「なぁに?それじゃ男同士でキスとかしてるわけ?マジで?男子って変態!」

  キャッキャッと笑うイクエがうざくなって。

 「するわけねぇだろ!んじゃぁ、おまえはキスしたことあるのかよ、男と!」

 「あるよ!」

 あんまり簡単に答えるので、かえって面食らってしまった。

 「小さいころ、おとうさんとキスしたよ、毎日ぃ~!」

  呆然とする男たちの前ではしゃぐイクエという女は。
 たいした心臓の持ち主。さすがは陸上部のエースだ。

 「おとうさんや兄弟以外の男とキスしたことあるのかよ?!」
 と、してやったり顔でイクエに詰め寄ると、柄にもなく照れた表情を浮かべて
 「そんなこときいてどうすんだよ、変態!」
 なにかにつけて変態呼ばわりしたいイクエに、メイク係の女子が化粧をしていく。

  オレと全く同じ格好をした拝島監督が二人を呼んで
 「いいか。これがラストシーンだ。イクエがここから走ってきて、
 タカシの手を捕まえて抱きつくんだ。」
 するとイクエがまた声を上げた。「マジで?抱きつくんですか、タカシと!」
 拝島監督が「あたりまえだろ、そしたらカメラが回りこむから、
 キスしているように見せるだけでいいから。ほいじゃ、さっさと撮るぞ!」

 なにか異常に緊張しているオレがいて。
 さすがに緊張しているんだろうイクエがオレに向かって小声で言う。

 「ねぇタカシ、あんたとはさ、中学から長い付き合いだよね。」

 「まぁ付き合いってェか・・ま、そうだよな。」

 「あんたおんなのこと抱き合ったこととかあんの?」

 「あぁ、ガキの頃、お袋によく抱かれてた。」

 「ふざけんなよ、おんな抱いて、キスしたことあるのかって聞いてんだよ!」

 「だから、ねーってばよ。」少しむくれて答えると。

 「あたしもないよ。試してみようか?」

 心臓の鼓動がドキリと高まり全身から汗がジワッと湧いた。

 それから無口になり。

 やっさんに眼帯をはめられて、



 オレはスネイクになる。


  拝島監督の声がして。

 「スタート!」

 太田先輩がカメラを回した。



  

 

♯シーン40 田舎の駅

首に巻かれたの爆弾を外されたスネイクは、機密を知った亜美を助けて
   
   逃走。

それから数日後。

満身創痍のスネイクと亜美は片田舎の駅に逃れた。

 

スネイク「亜美、キミとはここでお別れだ。
        港に出れば、外国への船を手配した。」

亜美「スネイク!」

亜美はスネイクに抱き着こうとするがスネイクは手を伸ばし亜美をさける。

亜美はスネイクに抱きつき、キスをする。


 * *
  イクエがかなり強引に右手を引っ張ってきたため、反動もあって
 オレはイクエの体を引き寄せ、抱えるように顔面を近づけて。
 眼を見詰め合って。

 「試してみようよ。」

  どちらが云ったかは憶えていない。どうせカメラからは見られないはずだ。
 そして唇と唇が触れた瞬間、ハッと眼を開いて。
 今度は目を閉じて、ふたたび唇を重ねる。
 心臓が高鳴り、いやオレの心臓だけじゃない。イクエの心臓の動きも伝わるほどに
 感じながら、抱き合った。


 「もういいよ、わかったから。」


  拝島監督が声を上げるまでオレとイクエは抱き合いキスをしていた。
 ふたりとも我にかえると照れくささのため赤面していて。
 イクエは案の定「ふざけんなよタカシ、図に乗りやがって!」と息巻いてみせた。
 オレも照れくささのあまり大声をあげた。
 「おまえが強引に寄ってくるからよ、ぶつかっただけじゃねぇか!」と云ってみても。
 やっさんはオレの肩を叩いてにやけた。
 「はいはい、ぶつかっただけなもんかよ、いよ、見せつけてくれたな!」と笑う。
 太田先輩に至っては「どうだった?舌入れた?」と聞いてくる始末。
 
 イクエは「バカじゃねぇの?!」と怒り出した。

  拝島監督はオレとイクエを放っておいて最後のラストカットを撮り始めた。
 駅に隅に置いていた大型バイクにスネイクが跨ると、颯爽と走り去るシーン。
 バイクの免許を持たないオレでは撮れないシーン。
 あぁ通りで、オレと全く同じ格好していたんだ。
 後ろ向きで歩いてゆき、バイクに乗り爆音を上げて走り去る。

  放っておかれたオレとイクエは悶々としたまま。
 オレは居づらさもあって。「ごめんな。」とイクエに声をかけると。
 イクエは態度を硬化させた。

 「なにがごめんだ!」

 「悪かったよ。」

 「そんなに私のキスは悪かったのかよ!」

  イクエに今日、何云ってもはじまらない。
 そう思いオレは撮影隊の方に向かった。
 夏の終わりの陽射しが眩しかった。



  そしてオレのスネイクは終わった。






       
       

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